2011-02-16

フィンランドの夏の旅




今年の夏は、「一度でいいから静かな森と湖に囲まれたフィンランドの夏小屋で一夏を過ごしたい」という両親の夢を叶えるべく、かれこれ6,7年ぶりにフィンランドを訪れました。

まずは、首都ヘルシンキで写真家の友人に会うなり船に乗せられて向かった先は建築家マッティ・サナクセンアホが休暇で滞在する「ヴィラ・オイヴァラ Villa Oivala」へ。 フィンランド人建築家Oiva Kaillio自ら設計した、最高傑作と呼ばれるサマー・コテージです。SAFA(フィンランド建築家協会)が管理しており1週間単位で借りることが出来ます。しかし大変人気なので、毎年応募しても10年に1回ほどしか滞在する権利が回ってこないとか。




まずはマッティ自らシャンパン・サービス。気さくすぎる彼は、こう見えてもフィンランドを代表する建築家です。私を半年間、事務所に(ほぼ)雑用係として置いてくれた恩師でもあります。








数十平の小さな別荘で、フィンランド語で言うところのMokki(oはラウム。小さな家、小屋の意)。プランは単純なロの字型。このシンプルの究極のようなプランが非常に濃密な空間を生み、ロの字の外世界(森、湖)と内世界(中庭、生活)とが奇跡のような合致を見せるのです。とりわけ、ロの字の一辺に位置するダイニングを通して見る景色の美しさは人の心を揺さぶります。

写真が少ないのは、友人たちとの久々の再会に舞い上がってしまいすっかり撮り損ねたからです。次回行くチャンスがあれば三脚を担いでいきたいですが、ここへ連れてきてくれた写真家Jari Jetsonenの素晴らしい写真集があるので必要ないかな。





Finnish summer Houses by Jeri & Sirkkaliisa Jetsonen
東京デザインセンター(五反田)のデザインブックスで(取り寄せになるかもしれませんが)取り扱いあります。









そして、Mattiが戸外で燻製した魚料理にしばし舌鼓。フィンランドの最初の夜が更けていくのでした←白夜ですけれど。



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友人の別荘に招かれて何泊かを過ごしました。本棟に、ゲストルームの棟が付いた、L字型のコテージです。







友人のおじいさんが建てた別荘だと聞きました。場所は湖に突き出た小さな岬の先端で、三方が湖に囲まれた絶好のロケーションです。フィンランドではどの家族も、先代先々代から受け継いだ別荘があるので、国内に2つ3つサマーコテージを持っているのが普通です。近年は隣家が5,60mしか離れていずに建ち並ぶ別荘も目立ちます。しかし、もちろん価値があるのは開発前に大きく買った広い広い土地に他なりません。フィンランド人は「おがくずが流れる川(人が近くに住む場所)には住まない」というほどですから。ここも最初は電気も引かれていなくて、夜は自家発電だったそうです。今でも水道はなくて、湖の水を濾過してポンプでくみ上げて使っています。

湖に面してサウナ小屋があります。






サウナにはこのようなちょっとした前室があり、着替える他にも過ごしやすい工夫がされています。







サウナの火を熾すのは一家の主人の仕事です。小さな頃から仕込まれているので、どの木が火がつきやすいか、木の大きさの選別、温度の保ち方、あっという間にサウナ石を温める手際は見事です。サウナに入ると、サウナ石に水を掛けて蒸発させ、ミストサウナにして温度を上げていきます。



これは何かというと・・・







トイレです。水道もガスもないですから、もちろん下水道もありません。蓋をパッと開けて用を足したら藁や、下記の写真のバケツに入った土を掛けます。気温が低く湿度も低いからかほとんど臭わないです。日本のくみ取り式とはだいぶ印象が違います。

ここのはユニット式でしたが、フィンランド留学時代に測量で訪れた島では、学生皆で退去時に汚物と藁を燃やして自然に還しました。








出すものも自然に帰すけれど、入れるものも、自然の恵みからと言いたいところ。仕掛けを作って、夏の風物詩であるザリガニを捕らえようとなにやら家主が動き始めました。食いしん坊の私はザリガニと聞いて期待に胸を膨らませつつ、ザリガニ猟を見学。








プラスチックの網の中に、(これは私達が湖で釣った)魚を刺して、これを餌にします。









そーーーっと、これを湖の中へ。葦の生い茂る所にザリガニが集まるらしいです。これを数カ所に沈めました。一晩たって、翌朝引き上げてみました。しかし、とても残念なことに、一匹もかかっていませんでした。どうやら最近はなかなか釣れないそうです。環境のせいでしょうか?ああ、ザリガニ!残念。








↓写真のザリガニはスーパーで買った冷凍物です。









借りた別荘の周りの森で摘み取ったベリー。夢中で摘み取っていると、あっという間に時間が経ちます。








ここは私たちが自分たちで借りたコテージです。幾つか貸別荘のサイトがあり、簡単に借りられます。国有地内の貸別荘のサイトなどもあります。別荘で過ごす時間は、本を読んだり、釣りをしたり、ベリー狩りをしたり、ほとんどこの三つを順繰りに消化して過ごします。














夕方近くになったらサウナに入り、湖に入 りビールを飲んで白夜を満喫するのが一年の最高の贅沢なのです。なんと言っても一年の半分は暗い夜に閉ざされた冬なのですから、夏の楽しさ美しさは格別な ものだろうと、異邦人の私でさえ理解できるのです。