2012-12-30

油団(ゆとん)

我が家の油団(ゆとん)を、炒った米糠で乾拭き中。
ガーゼから塩梅よく油がしみ出しほんのりと艶を与えてくれています。そんな先人の知恵にも驚きです。




油団というのは、油をしみ込ませた和紙を何枚も貼り重ね合わせた和風ラグのことです。


つやっとさらっと、皮のような風合いがあります。制作に非常に時間と手間がかかり高価なため、料亭やお屋敷で珍重されていました。今は絶滅的な日本の手技の一つで、作っているところも福井にある一軒のみです。

なぜそんな分不相応なものがうちにあるかというと、福井で地場産業関係の仕事をする母がその素晴らしさに触れて作ったのですが・・・置く予定のリビングにはそぐわなく(和室もあるのですが、大きさ合わず)、倉庫に数年眠っていたものを捨てるようなことを言うのでそれではと引き取りました。ほんと、職人さんには申し訳ないほど傷めてしまっているので、お詫び程度に手入れだけはちゃんとしておこうと。

数十年経つと下の写真のような飴色になります。いつかはちゃんと補修もしたいのですが、それまで職人さんが残っているかどうかが気がかりです。



<福井の紙問屋:杉原商店さんのHPより>




2012-07-31

Balli バリ 後編

バリ後編は海!

これまたどこに泊まるか悩みに悩みました。バリ好きな方から必ず勧められるのはAMAN RESORTSアマン・リゾーツです。元はヒッピーとサーファーに愛されるリゾート地だったバリを、世界中からジェットセッターが集うラグジュアリー・リゾート地に格上げしたのはアマンに他なりません。バリだけでも3ヶ所あり、海にあるアマン・キラはまるでプールの水面が海面と繋がっているかのように錯覚させるインフィニティ・プールで有名です。そしてとりわけ賞賛されるのはそのホスピタリティ。アマン・ファンのお一人である有名デザイナーの方の言葉によれば、「質が他のバリのリゾートとは違う」のだそうです。

しかし、今回私が見たいのはヴィラの設計やインテリアです。しかし、アマンは建てられてから20年経っているので、アマンの次にお施主さん達からの人気が高い、Four Seasons Resort Bali at Jimbaran Bayフォーシーズンズ・ジンバランベイにしました(山側にあるサヤンは前編でご紹介のとおり)。





ヴィラへは、フロントからカートで行きます。
階段を下りた奥が私達のヴィラです。




玄関の門を抜けると、その先に・・・




こじんまりとしたプライベートプールです。
伝統的な草葺きの屋根が連なり、リゾート一体が集落のような雰囲気です。










プールから振り返ったところ。右に半屋外のLDスペース。左が母屋。
扉や家具はバリの伝統的な調度品。そのため立て付けは不安なほど簡素で、セキュリティはおおらかです。





サイトからプラン図を拝借しました。。ほぼ正方形の200㎡の敷地に、海側に向かってプライベートプールがあり、平屋の母屋と半屋外のダイニング・リビングがコンパクトにまとめられたプランはよく練られています。実際、敷地に余裕のないことが多い日本で参考になるスケールかと思います。敷地も延べ床も2倍以上あったチェディのヴィラに較べると、やはりせせこましさはあったけれど、最小面積ヴィラの一つの模範解答です。もちろんここも、コンベックスで測量しました(そろそろさすがにレーザーが欲しい)。







朝はルームサービスで。







水回り。プール、シャワー×2(屋内と屋外)、バスタブと、とにかく多い。
湿気が多い熱帯のバリではしょっちゅうシャワーを浴びて汗を洗い流すことが必要です。







天蓋付きのベッド。実際問題、蚊帳がないと眠れません。





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バリの人気ダイニングバーのRock Barロック・バーに行きました。岸壁の真下に海へせり出すように 建てられているので、アクセスはゴンドラで急斜面を降りて行きます。一度に乗る人数も限られていてかなりの行列に並びました。工事も大変だったろうと思います。海側からも資材を運んだりしたのでしょうか。設計は日本人だそうです。
















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宵も更けたのでちょっとオシャレして『バリの六本木』スミニャックへ。行き先は友人のMs.Ayumiがブランド・マネージャーを務める、去年オープンしたばかりの Potato Head Beach  Clubポテト・ヘッド・ビーチ・クラブ。
ビーチ、カクテル、パームツリー。
こんな映画のような世界って、本当にあるんですね・・・一瞬、言葉が出ないほど。Cooooool.








青く妖しく光るプールの向こうは漆黒の海






気分はもう007





 夏は大盛り上がりのパーティーがガンガンあるようなのでBalliに行った際はチェックのほどを。
ちょうどクラブに新しくフレンチ・レストランがオープンする直前だったので、プレオープン・ディナーをご馳走になってしまいました。それが、ここは「バ」リですか??「パ」リでなく??という繊細なモダン・フレンチ。行く価値あります!シェフは日本人の方でした。納得。技術とセンスを感じる場所には日本人あり。

フォアグラをマンゴーの何かでくるんだもの。甘く美味しいバリのフルーツをアレンジ。




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バリの家具を色々と見たかったので、Ms.Ayumiに『バリの目黒通り』、家具屋が建ち並ぶクロボカン・エリアを案内してもらいました。待ち合わせに彼女の新築のお宅にお邪魔しました。バリの一般住宅(というにはリッチ過ぎですが)を実際目に出来ました。




当然のようにプール完備です。






朝、出勤前にひと泳ぎするそうです。ああ、うらやましい。








キッチンやバスルームがあるのは建物内ではなく外でした。一年中温暖で湿気の強いバリでは、水回りは外にあったほうが衛生的だし快適なんですね。広いテラスとプール。すぐにでもホーム・パーティーが始まりそう。









そして、まず連れて行ってもらったのは町の家具屋さん。






東京でも見かけるようなバリの家具がところ狭しと並んでいます。







ここは、家具職人さん(奥の男性)に、直接好みや仕上がり等を相談すれば、オーダーで作ってくれます。Ms.Ayumiも前々から頼んでいる家具が色々あるらしく、出来や納期の相談をしていました。






歩いている時に発見。お店のショッピングバッグやタグを作ってくれるお店(問屋?)。このあたりは専門店が多く、ガラス、金属、刃物、それぞれたくさんあります。これは絶対にまた見にまわりたいです。











家具工場発見!






新しくオープンするリゾートやレストランのための家具を作っていました。
すごい量です。しかも全て手仕事です。






皆さま、闖入者には目もくれず黙々とお仕事されています。











お洒落インテリア・ショップ。オーナーはフランス人。インターネットで世界中から注文できるそうです。
こういった家具屋がまわりきれないほどありました。










アンティークショップ







まだバリに移り住んで日の浅いMs.Ayumi。これからもっとディープなバリを開拓したいと話していました。お仕事忙しそうでしたが、バリで取材があれば力になってくれると思いますのでお繋ぎします。













2012-07-30

Balli バリ 前編


初めてのバリ。以前より、様々なお施主さんから「リゾートならバリによく行きます」「バリの家具を購入予定なので」「インテリアはバリのスタイルが好き」と聞くことが多く、一度は行かねば・・・と思って早5年。建築を見て回るのが趣味で旅先でもじっとしていられない私がもっぱら行くのはヨーロッパや南米や発展著しいアジアもしくは秘境系(リゾートが苦手なのです)。優雅にchill outできない性分のせいでなかなか踏ん切りがつきませんでした。きっかけはその前の年に亡くなった祖母が遺してくれた数十万円が孫にも分配されたことでした。記念に残るようなものを買うか、曾孫のために使わせてもらうか等と考えて、旅好きの私らしく、ありがたく旅費に充てることにしました。

バリはバリ島というインドネシア国の島の1つです。インドネシアの全人口のほぼ全てイスラム教ですが、バリ島には土着的なアニミズムがあり、イスラムより先にヒンドゥーも入ってきていたので『バリ・ヒンドゥー』と呼ばれる独特な形態のようです。沖縄みたいですね。

バリには、熱帯林に覆われた山と棚田の景色と、青く美しい海に囲まれた海岸線という二面性があります。どちらも見たかったので、前半は山で過ごし、後半は海で過ごすことにしました。山での宿泊は、寺社がとりわけ多くたくさんのリゾートが集まるUBUDウブドにある、THE CHEDHI CLUBザ・チェディ・クラブという隠れ家風のヴィラ滞在型リゾートにしました。


決めたポイントは、ここが元富豪の邸宅だったということで、伝統的なバリの建築様式も見ることが出来るのではないかと期待したためでした。

ハイヤーで敷地に入ると、階段の先にはエントランスの門が。山門?





美しいレセプション。天井が高く風が吹き抜けます。




敷地内にはどこにもお地蔵さんのように彫像が置かれています。

この黒と白のギンガムチェックは、地元の人によれば『白=善、黒=悪』であり、それが渾然一体となっていることを象徴しているそうです。この柄を纏うことが出来るのは神の彫像のみなのだとか。神は善だけではなく悪の力も合わせもつと考える感覚は複雑ですが、神の住む島と例えられ、人々と神が近いバリそのものを象徴しているのだと、感じました。









チェディのレストランからはパノラマで水田が見渡せます。インドネシアは年中温暖なので、二毛作ならぬ三毛作が可能です。季節もほとんどないので、あっちで田植えしているかと思うと、こっちでは稲刈りしています。(この水田がそんな時期でなくてホッとしました)。あぜ道を地元の人が仕事に行き交う姿を眺めているだけで悠久の時間が流れます(川辺で衣服を脱いで水浴びをし始めた男性にはちょっと吃驚しましたが)。小トリアノン宮にしても修学院にしても、田園風景を愛でる贅沢を発見したのは王侯貴族。贅沢なものを作るには、自分が贅沢をしないと分からないということでしょうねえ。



バリといえば絞りたての濃厚なフルーツジュース。雨期の入りはじめだったため、果物が瑞々しく美味しい季節でした。







チェディの食事は本当に素晴らしい味付けで、特に野菜に付けるピーナツソースは一体何が入っているのかと箸が止まりませんでした(レシピを聞くと親切に教えてくれ、帰る時はお米をお土産に下さいました!)。







 私達が滞在したヴィラの外観。高い塀で囲われているので、中は一切覗けません。広い敷地に全部でたったの20室程度しか無いので、プライバシーが気持ちよく保たれています。





プールとガゼボ(東屋)





ベッドルーム






シャワールームの他に、半屋外のバスタブ




恒例の測量スケッチ・・・1週間ぐらい滞在できれば仕事を忘れることも出来そうなのですが。




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バリには、なんと1万ものお寺があるそうで。。。すごい。そしてそれぞれのお寺は約210日ごとに建立記念日がくるので、1年中どこかでそれを祝う『オダラン』と呼ばれるお祭りが催されています(大安に当たるような日は、ウブドだけでも4、5ヶ所の寺でオダランがある)。1日で終わるお祭りや数日かけるのなど色々あるようですが、基本的に、朝〜昼にかけて神が寺に降りてくるのでそれを迎え、夜はまた寺から去る神を送る儀式をするようです。その間は露天が出て、供え物をする人々で溢れかえり、余興の音楽(有名なガムラン)や路上劇も繰り広げられます。









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ウブドでは、他のリゾートホテルも見学しました。まずは有名どころのFour Seasons Resort Bali at Sayan フォーシーズンズ・サヤン。オープン当初は斬新な設計が話題になりましたので、建築家の友人からもバリに行くなら一度見に行くのがよいと勧められていました。

ホテルはサヤン渓谷に建てられています。地上からのアクセスは、デッキです。この先に水盤があり、その中央から階段で降り、ホテルのレセプションへと誘われます。『建築的』なアプローチです。何かを思い出します・・・Tadao AndoのWater Temple。







斜面に突き出るように設けられたテラス席。眼下には渓谷の鬱蒼とした熱帯雨林と、アユン川が望めます。








サヤンは60室以上ある大きめのリゾート施設なので、移動はカートです。ヴィラの一つを見せてもらいました。プライバシーのためか、地上には東屋があるだけで、部屋へは階段を下りて行きます。





下りてきた階段を振り返ったところ






プライベート・プールとパティオ





ベッドルーム






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もう一つ見に行ったのは、泊まってみたかったComo Shambhala Estate at Begawan Giriコモシャンバラ・エステート・アット・ベガワンギリ(ああ、舌噛みそう!)。他のリゾート施設に較べてワンランク上のここは、滞在型ウェルネスセンターで、レストランもローフードです。
初めてのバリで観光もしたい私は、ここに籠ってヨガとカロリー制限された食事で心身デトックスするというラグジュアリーな旅人にはなれませんので(宿泊料金も予算超過)、ハイドロテラピー(近頃のリゾート施設に増えている、強いジェットで身体に負荷を与えて運動させる海水プールでのエクササイズ)とシロダーラ(額に胡麻油を流すアーユルヴェーダ流のマッサージ)を体験しました。施設内は水着移動だったため、内部の写真はあまり撮れなかったのが残念。エステルームの屋外シャワーは素晴らしかったのに。






民族調に偏らず、シンプル・モダンにもなりすぎず、正しいコンテンポラリー・バリ風。バリが好きと仰る日本人の方は、こういうテイストが好きなんだろうな、というシックでクリーンなインテリア。





スパの後は広いガゼボでしばし休息。断崖絶壁の上に建っていることがよく分かる素晴らしい眺め。





ウブド中心部から離れているので、本当に静かです。お子様は受け付けない雰囲気でした。隅々までコントロールされたインテリアは、宿泊ヴィラではどうなのかが気になりました。予算が見合えば次回に泊まりたいです。




後編は海です→