初めてのバリ。以前より、様々なお施主さんから「リゾートならバリによく行きます」「バリの家具を購入予定なので」「インテリアはバリのスタイルが好き」と聞くことが多く、一度は行かねば・・・と思って早5年。建築を見て回るのが趣味で旅先でもじっとしていられない私がもっぱら行くのはヨーロッパや南米や発展著しいアジアもしくは秘境系(リゾートが苦手なのです)。優雅にchill outできない性分のせいでなかなか踏ん切りがつきませんでした。きっかけはその前の年に亡くなった祖母が遺してくれた数十万円が孫にも分配されたことでした。記念に残るようなものを買うか、曾孫のために使わせてもらうか等と考えて、旅好きの私らしく、ありがたく旅費に充てることにしました。
バリはバリ島というインドネシア国の島の1つです。インドネシアの全人口のほぼ全てイスラム教ですが、バリ島には土着的なアニミズムがあり、イスラムより先にヒンドゥーも入ってきていたので『バリ・ヒンドゥー』と呼ばれる独特な形態のようです。沖縄みたいですね。
バリには、熱帯林に覆われた山と棚田の景色と、青く美しい海に囲まれた海岸線という二面性があります。どちらも見たかったので、前半は山で過ごし、後半は海で過ごすことにしました。山での宿泊は、寺社がとりわけ多くたくさんのリゾートが集まるUBUDウブドにある、THE CHEDHI CLUBザ・チェディ・クラブという隠れ家風のヴィラ滞在型リゾートにしました。
決めたポイントは、ここが元富豪の邸宅だったということで、伝統的なバリの建築様式も見ることが出来るのではないかと期待したためでした。
ハイヤーで敷地に入ると、階段の先にはエントランスの門が。山門?
美しいレセプション。天井が高く風が吹き抜けます。
敷地内にはどこにもお地蔵さんのように彫像が置かれています。
この黒と白のギンガムチェックは、地元の人によれば『白=善、黒=悪』であり、それが渾然一体となっていることを象徴しているそうです。この柄を纏うことが出来るのは神の彫像のみなのだとか。神は善だけではなく悪の力も合わせもつと考える感覚は複雑ですが、神の住む島と例えられ、人々と神が近いバリそのものを象徴しているのだと、感じました。
チェディのレストランからはパノラマで水田が見渡せます。インドネシアは年中温暖なので、二毛作ならぬ三毛作が可能です。季節もほとんどないので、あっちで田植えしているかと思うと、こっちでは稲刈りしています。(この水田がそんな時期でなくてホッとしました)。あぜ道を地元の人が仕事に行き交う姿を眺めているだけで悠久の時間が流れます(川辺で衣服を脱いで水浴びをし始めた男性にはちょっと吃驚しましたが)。小トリアノン宮にしても修学院にしても、田園風景を愛でる贅沢を発見したのは王侯貴族。贅沢なものを作るには、自分が贅沢をしないと分からないということでしょうねえ。
バリといえば絞りたての濃厚なフルーツジュース。雨期の入りはじめだったため、果物が瑞々しく美味しい季節でした。
チェディの食事は本当に素晴らしい味付けで、特に野菜に付けるピーナツソースは一体何が入っているのかと箸が止まりませんでした(レシピを聞くと親切に教えてくれ、帰る時はお米をお土産に下さいました!)。
私達が滞在したヴィラの外観。高い塀で囲われているので、中は一切覗けません。広い敷地に全部でたったの20室程度しか無いので、プライバシーが気持ちよく保たれています。
プールとガゼボ(東屋)
ベッドルーム
シャワールームの他に、半屋外のバスタブ
恒例の測量スケッチ・・・1週間ぐらい滞在できれば仕事を忘れることも出来そうなのですが。
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バリには、なんと1万ものお寺があるそうで。。。すごい。そしてそれぞれのお寺は約210日ごとに建立記念日がくるので、1年中どこかでそれを祝う『オダラン』と呼ばれるお祭りが催されています(大安に当たるような日は、ウブドだけでも4、5ヶ所の寺でオダランがある)。1日で終わるお祭りや数日かけるのなど色々あるようですが、基本的に、朝〜昼にかけて神が寺に降りてくるのでそれを迎え、夜はまた寺から去る神を送る儀式をするようです。その間は露天が出て、供え物をする人々で溢れかえり、余興の音楽(有名なガムラン)や路上劇も繰り広げられます。
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ウブドでは、他のリゾートホテルも見学しました。まずは有名どころのFour Seasons Resort Bali at Sayan フォーシーズンズ・サヤン。オープン当初は斬新な設計が話題になりましたので、建築家の友人からもバリに行くなら一度見に行くのがよいと勧められていました。
ホテルはサヤン渓谷に建てられています。地上からのアクセスは、デッキです。この先に水盤があり、その中央から階段で降り、ホテルのレセプションへと誘われます。『建築的』なアプローチです。何かを思い出します・・・Tadao AndoのWater Temple。
斜面に突き出るように設けられたテラス席。眼下には渓谷の鬱蒼とした熱帯雨林と、アユン川が望めます。
サヤンは60室以上ある大きめのリゾート施設なので、移動はカートです。ヴィラの一つを見せてもらいました。プライバシーのためか、地上には東屋があるだけで、部屋へは階段を下りて行きます。
下りてきた階段を振り返ったところ
プライベート・プールとパティオ
ベッドルーム
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もう一つ見に行ったのは、泊まってみたかったComo Shambhala Estate at Begawan Giriコモシャンバラ・エステート・アット・ベガワンギリ(ああ、舌噛みそう!)。他のリゾート施設に較べてワンランク上のここは、滞在型ウェルネスセンターで、レストランもローフードです。
初めてのバリで観光もしたい私は、ここに籠ってヨガとカロリー制限された食事で心身デトックスするというラグジュアリーな旅人にはなれませんので(宿泊料金も予算超過)、ハイドロテラピー(近頃のリゾート施設に増えている、強いジェットで身体に負荷を与えて運動させる海水プールでのエクササイズ)とシロダーラ(額に胡麻油を流すアーユルヴェーダ流のマッサージ)を体験しました。施設内は水着移動だったため、内部の写真はあまり撮れなかったのが残念。エステルームの屋外シャワーは素晴らしかったのに。
民族調に偏らず、シンプル・モダンにもなりすぎず、正しいコンテンポラリー・バリ風。バリが好きと仰る日本人の方は、こういうテイストが好きなんだろうな、というシックでクリーンなインテリア。
スパの後は広いガゼボでしばし休息。断崖絶壁の上に建っていることがよく分かる素晴らしい眺め。
ウブド中心部から離れているので、本当に静かです。お子様は受け付けない雰囲気でした。隅々までコントロールされたインテリアは、宿泊ヴィラではどうなのかが気になりました。予算が見合えば次回に泊まりたいです。
後編は海です→