2010-11-02

事務所のインテリア



SNSで本棚が欲しいと募ったところ、知人から無印のスチール棚を譲っていただきました。とりあえず模型棚にして、ラウンジコーナーを少しお片付け。
うちの事務所のインテリアは実家で余った家具の寄せ集めなので、和洋折衷でテイストもいろいろ。大きな面積を占めているのがアジアン風家具で、床は竹フローリングで天井も竹で組んでいるため、大きく括ればバリ風(?)。かなり強引ですが・・・バリに行ったこともないですし。天井の竹の中を、配線が通っています。フロアーシステムならぬ、竹システム。



事務所に来た方に懐かしがられるのがこのMac君です。
私より一つ上の世代にとっては特別な思いがあるようで、「いいねーいいなー」と欲しそうな顔をされちゃいます。裏を見ると、1Mbって表記されています。目を疑いますよね。写真1枚ぐらいの容量しかなかったんですね。ちなみに、フロッピーを入れて立ち上げると、デスクトップ型のキャラクターのMac君が出てきてセットアップ画面になります。当時はこれだけでもドキドキしたんだろうな。


本棚は背表紙の色でグラデーションにしています。「色」が好きなので、どうしたって自宅も事務所も色が溢れてきてしまいます。補色同士を合わせたり、基調はグリーンで統一したりと工夫しています(もともと壁がモスグリーン。そこでハラーシステムの家具を緑に、壺など小物も緑を選ぶようにしています)。一般にモノトーンの設計事務所が多い中、「設計事務所っぽくない。なんだか寛ぐっていうか癒されます」とホッとした表情をしていただくとこちらもうれしいです。

このあたりは趣味のもの。いつか茶箱を作るつもりで小さめの茶道具を集めています。籠は母からのお土産。錫の急須は値下げ交渉に足繁く通った上海のお店で、茶碗は軽井沢の万平ホテルの骨董品店と、それぞれ出会った時の思い出があります。


中央の机で模型を作ったり、スケッチを描いたり。片付けは得意ではないので、机廻りはごちゃごちゃです。毎度、打ち合わせ前に慌ただしく片付けています。




悩みはこの奥の大きな窓。冬になると太陽が低くなるのでちょうど午前中いっぱいPC画面に日が当たるためまぶしくて(反射グレア)画面が見えません。縦ブラインドを掛ければいいだけなのですが、さっぱりとしたシンプルな窓周りが気に入っているので、脇にブラインドのたまりが出来るかと思うと、いっそ我慢我慢。午前中は机では仕事できず、PCをウロウロ移動させて陰を探しています。

2010-08-03

2010 日月会建築賞


7月まっただ中の夏休み前の母校・武蔵野美術大学に、審査員として招集をかけられ行って参りました。去年から、OBOG会である『日月会』主宰で、3年生の希望者を対象に課題を審査して与える賞を設けています。貴重な休みの日ではありましたが、私達OBOGも少しは何かのお役に立てるならばと引き受けました(わざわざ赤子を連れて一緒について来てくれた夫に感謝)。

久々に来た大学は新しい建物が幾つも建っていて、芦原義信色がだいぶ薄まってはいましたけれど、やっぱり懐かしさはひとしおです。とりわけ好きだった油画棟(グラウンドレベルのピロティから螺旋階段で上がると小さなアトリエというユニットがたくさん寄り集まっている設計)が使いづらさと、延べ床がほとんど無い(共用部90%?笑)という理由で取り壊されるなんていう噂を聞いていましたが、綺麗にクリーニングされて残っていてほっとしました。
ちょうどこの夏には藤本壮介氏設計の図書館も竣工し、こんな片田舎なのに(小平市の皆さまごめんなさい)さながら建築ビエンナーレのようです。建築学科のある大学ってそこの教授連がこぞって設計するからどこもそうなるのですけど。

さて、3年生って、どんな時期だろう。一般教養の単位は取り終わって、設計に本腰を入れ始めてすぐかな。人によってはもう『建築向いてないかもー』と気づき始める時期でもあるし、これから建築が面白くなる時期でもある。いよいよ自分の力が試されてくるのでドキドキして武者ぶるい、そんなところでしょうか。

今回エントリーしてきた学生は20名ほど。課題はゼミの授業で出されたものなので、学生が所属するゼミによって違います。審査員も出されたのがどの課題の作品なのか、資料と首っ引きで確認しなければなりません。しかし、それぞれの作品の脇に学生が自ら立ってプレゼンしてくれたので、思ったより混乱することはありませんでした。

「それではプレゼンを始めてよろしいでしょうか?」
そんな一声を審査員に掛けて引きつけてからだいたい3分ぐらいで発表していきます。その内容はしっかりしていて私達の時代よりも喋るの上手い。私達の頃は、あがってしっちゃかめっちゃかだったり、詩を朗読したり、旅行の土産話を延々しはじめたり、とにかく講評は時間がかかってかかって仕方がなかったものです。あとで教授に聞いたら「訓練させたんですよ〜」と苦労を忍ばせるような口ぶりでした。すでに一度、授業内で課題発表を済ませているのでうまくまとめられているというのもあるのでしょう。それでも受け答えからもコミュニケーション能力が平均的に高いように感じましたし、なんだかお施主さんになって乗せられた気分になることさえありました。
えーーっと、たしか、この子達はゆとり世代まっただ中ですよね。その影響と考えると面白いですね。

ざっくりと幾つか写真でご紹介したいと思います。

『流動性と停滞性』


天井から無数に糸を垂らした机で作業をし、身体に当たった糸を切ったりなどして自分の挙動をノーテーションする。そのパターンを都市における公共スペース(公園、通り道、休息場)に落とし込んだ作品。映像も使ったりしていて、意欲的でした。



『場所と物とそれを見ているボク』

写真。ミクストメディア。撮った場所で収集した物を樹脂で閉じこめた作品。こういった現代美術のような作品も受けいられるのがムサ美らしさ。



『現代に残る「人間の生物的本能」に因った境界線』

立川市の奇妙に延びた境界線に地図で気付き、その要因や成り立ちを追った考察。NHKの『ぶらタモリ』を文字で読んでいるかのような作品。「欲しいわ〜」としつこくおねだりしたら、本当に貴重な1冊を頂けちゃいました。



『Urban + Nature House』


女子学生2人の共同製作。樹形から連想される柱を幾つもモデル化したり、木漏れ日をトップライトに反映させるパターンを研究したりと、大作でした。審査でも高い評価でした。

大賞、準大賞(それぞれ太陽賞、満月賞、三日月賞・・・と、日月にちなんだ名が付けられています)の写真がここにないのが残念ですが(時間がなく終了間際に数枚撮れたのみでした)、若さを感じるいい作品が賞を獲れたと思います。

後日、日月会のHPに受賞作品が載ると思いますので、こちらをご覧下さい。

日月会ブログ『日進月歩』
http://nichigetsukai.com/blog/

審査を終えての感想。ピュアな学生の感性に触れて充実した時間になりました。審査後の、学生との飲み会も楽しく、このような機会を与えて下さった日月会に感謝しております。
作品は(まだ3年生だし?)オリジナルを知らずに名作そっくりな物を出してきたり、スケール(人や街に対して小さすぎたり大きすぎたり)は校内のリアル建築を体感してもっと考えようよ、とかありますけれど、それもこれも若さゆえと思うと、初々しいとしか言いようがないのでした。若者と日々ふれ合える先生がちょっと羨ましくもありました。


2010-06-12

ファッションとボタニカル


白金のプラチナ通りを歩いていたら、アダム・エ・ロペ(洋服のセレクトショップ)が『BIOTOP アダム・エ・ロペ』として環境やビオトープをコンセプトに改装していたので、覗いてみました。まず表から気付くのは花屋が店内に出来ていたこと。10年前にインテリアショップに花屋を開かせていた表参道イデーも懐かしいですが、このところ、ファッション(流行のライフスタイル)とボタニカル(植物)の組み合わせが珍しくなくなっていますちょっと前になりますが、原宿のディストリクトにも店内に芝生スペースがありましたね)。今年も、フラワープリントのドレスは町に溢れています。グリーンがあるだけで建築も店構えも見た目割り増しアップだし、エコロジー(かどうかは別として)をアピール出来て一石二鳥だと思います。街中のビルだって、もっとグリーンの使い方の研究の余地がありますよね。



店内はガーデニングしやすいような長靴とか『ECO』なんて描かれたTシャツが並んでいました。1階は他に自然派化粧品やフレグランス・キャンドルが所狭しと並んでいます。

全体としては着やすそうな綿素材のテレッとしたカーディガンや、カットソーにすごく奇抜なボトム、アクセサリーやストール、帽子を合わせるのが流行?

今年はショーパン(ショートパンツ)が大流行なので、素材違いや、パールやスパンコールが付いたものなど、色々ありました。たぶん、ショーパンの持つ少年ぽさや、頑張り過ぎない着崩し感が、肩肘張っても生きにくいだけの世相を映しているのではないかと。「子供時代に戻り土を触って、緑を愛でようよ。」そんなトレンドを感じました。

奥の壁が緑化されています。ミニ・パトリック・ブランがここにも。最近、珍しくないほどに良く見るようになりました。(*フランスの造園家。ケ・ブランリ美術館の壁の緑化などで有名)



ここまでやるか〜〜と驚いたのが、戸外のツリーハウス。決して狭くない敷地いっぱいにそびえ立っています。店員さんの許可があれば、中にも入れるようです。このショップも前は、上品なシロガネーゼ向けの洗練された趣だったのが、こんなワイルドなことになっているとは。

それにしても、藤森建築(と言っていいかどうかはともかく)をこんなファッションの町、白金に出現するなんて藤森さん、すごいな〜。10年以上前は、全くのオルタナティブだったのに。

ビオトープだとかパトリック・ブラン、藤森建築などなど、10年ぐらい経つとこうやって消費者目線まで降りてくる、それが顕著に分かる人気セレクトショップは、情報発信の場であるだけでなく、私達のような業種にとっては情報収集の場ですね。




2010-06-08

5月文楽公演






久々のブログ更新です。この1年は私事ながら、慌ただしくも幸せなことが重なり充実
した日々を過ごしています。が、お陰さまで溜まりに溜まった旅行記、体験記、日常の気づき・・・今からでも遅くはないと思い直して、古いことでも更新していくつもりですので、息抜きにでも覗いて下されば幸いです。

さて、先日の春の文楽公演に誘われて行って参りました。国立劇場での公演は1年のうち2月、5月、9月、12月と4回あります(もちろん日本全国の劇場では他の月も公演があります)。とりわけ2月は毎年、最も人気のある近松門左衛門作の心中物をやるのでとりわけ人気があるのだそうです。この度行ってきたのは近松半二作の『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』。近松半二は門左衛門の弟子で、以前、恋の力で狐に変化するお姫様が出てくるというあらすじに惹かれて観に行った『本朝廿四孝』(ほんちょうにじゅうしこう)』の作者でもあります。どうやらこの人、なかなか勝ち気な女性を描くのが得意だったらしく、この演目でも一人の男性を巡って争う女性二人の恋の鞘当てが見所の一つです。オヨヨと泣いて流されるだけではない、そんなところは現代の女性にも支持されるのでは?

義太夫はがなんといっても竹本住太夫さんが圧巻。もうだいぶお歳とのこと、引退されるのも、もしかしたらそう遠くないかもしれません。なんて同じ事を考えて通い詰める人が多いので、いつも文楽のチケットは取りにくいのですが・・・。歌舞伎と違って小さな人形を観るわけですから劇場も小さいためでもあります。

よくあらすじがよく分からない、と言う人がいますが、文楽はセリフの字幕が出ます。それを読めば話も分かるし、義太夫が精魂込めて語れば、節回し台詞回しのかっこよさがダイレクトに伝わります。

たとえば、主人公が勤める油屋を騙そうとする悪党の所行を
「暗い仕事は油屋の、明かりにきよろつく化けの皮〜」
とは、なんてかっこいい!
婚礼が決まりはしゃぎながら支度する娘の場面は
「覚束膾拵へも、祝ふ大根の友白髪、末菜刀と気も勇み、手元も軽う ちよきちよきちよき」
とはしゃぐ気持ちが伝わります。抜粋しているときりがないので、この辺で。歌舞伎もこうやってセリフ本(床本集)が劇場で買えると良いのに。

幕間では、友人のご招待で舞台裏も見せていただけました。いつもうっとりと文楽の世界に入ってしまうのですが、(がさつな私などよりもずっとずっと)繊細な動きはたったこれだけの関節から生まれるのかと思うと驚きます。今回の一幕目には、なんと本物の大根をスコーンスコーンと切る場面が出てくるのです。料理上手な人形を操るのは、やはり、吉田簑助さん。









義太夫は舞台の前に塩をまいて、清めてから上がります。

まだ命が吹き込まれる前の人形はまるで小さな人のようで、ドキッとしました。