2010-06-12

ファッションとボタニカル


白金のプラチナ通りを歩いていたら、アダム・エ・ロペ(洋服のセレクトショップ)が『BIOTOP アダム・エ・ロペ』として環境やビオトープをコンセプトに改装していたので、覗いてみました。まず表から気付くのは花屋が店内に出来ていたこと。10年前にインテリアショップに花屋を開かせていた表参道イデーも懐かしいですが、このところ、ファッション(流行のライフスタイル)とボタニカル(植物)の組み合わせが珍しくなくなっていますちょっと前になりますが、原宿のディストリクトにも店内に芝生スペースがありましたね)。今年も、フラワープリントのドレスは町に溢れています。グリーンがあるだけで建築も店構えも見た目割り増しアップだし、エコロジー(かどうかは別として)をアピール出来て一石二鳥だと思います。街中のビルだって、もっとグリーンの使い方の研究の余地がありますよね。



店内はガーデニングしやすいような長靴とか『ECO』なんて描かれたTシャツが並んでいました。1階は他に自然派化粧品やフレグランス・キャンドルが所狭しと並んでいます。

全体としては着やすそうな綿素材のテレッとしたカーディガンや、カットソーにすごく奇抜なボトム、アクセサリーやストール、帽子を合わせるのが流行?

今年はショーパン(ショートパンツ)が大流行なので、素材違いや、パールやスパンコールが付いたものなど、色々ありました。たぶん、ショーパンの持つ少年ぽさや、頑張り過ぎない着崩し感が、肩肘張っても生きにくいだけの世相を映しているのではないかと。「子供時代に戻り土を触って、緑を愛でようよ。」そんなトレンドを感じました。

奥の壁が緑化されています。ミニ・パトリック・ブランがここにも。最近、珍しくないほどに良く見るようになりました。(*フランスの造園家。ケ・ブランリ美術館の壁の緑化などで有名)



ここまでやるか〜〜と驚いたのが、戸外のツリーハウス。決して狭くない敷地いっぱいにそびえ立っています。店員さんの許可があれば、中にも入れるようです。このショップも前は、上品なシロガネーゼ向けの洗練された趣だったのが、こんなワイルドなことになっているとは。

それにしても、藤森建築(と言っていいかどうかはともかく)をこんなファッションの町、白金に出現するなんて藤森さん、すごいな〜。10年以上前は、全くのオルタナティブだったのに。

ビオトープだとかパトリック・ブラン、藤森建築などなど、10年ぐらい経つとこうやって消費者目線まで降りてくる、それが顕著に分かる人気セレクトショップは、情報発信の場であるだけでなく、私達のような業種にとっては情報収集の場ですね。




2010-06-08

5月文楽公演






久々のブログ更新です。この1年は私事ながら、慌ただしくも幸せなことが重なり充実
した日々を過ごしています。が、お陰さまで溜まりに溜まった旅行記、体験記、日常の気づき・・・今からでも遅くはないと思い直して、古いことでも更新していくつもりですので、息抜きにでも覗いて下されば幸いです。

さて、先日の春の文楽公演に誘われて行って参りました。国立劇場での公演は1年のうち2月、5月、9月、12月と4回あります(もちろん日本全国の劇場では他の月も公演があります)。とりわけ2月は毎年、最も人気のある近松門左衛門作の心中物をやるのでとりわけ人気があるのだそうです。この度行ってきたのは近松半二作の『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』。近松半二は門左衛門の弟子で、以前、恋の力で狐に変化するお姫様が出てくるというあらすじに惹かれて観に行った『本朝廿四孝』(ほんちょうにじゅうしこう)』の作者でもあります。どうやらこの人、なかなか勝ち気な女性を描くのが得意だったらしく、この演目でも一人の男性を巡って争う女性二人の恋の鞘当てが見所の一つです。オヨヨと泣いて流されるだけではない、そんなところは現代の女性にも支持されるのでは?

義太夫はがなんといっても竹本住太夫さんが圧巻。もうだいぶお歳とのこと、引退されるのも、もしかしたらそう遠くないかもしれません。なんて同じ事を考えて通い詰める人が多いので、いつも文楽のチケットは取りにくいのですが・・・。歌舞伎と違って小さな人形を観るわけですから劇場も小さいためでもあります。

よくあらすじがよく分からない、と言う人がいますが、文楽はセリフの字幕が出ます。それを読めば話も分かるし、義太夫が精魂込めて語れば、節回し台詞回しのかっこよさがダイレクトに伝わります。

たとえば、主人公が勤める油屋を騙そうとする悪党の所行を
「暗い仕事は油屋の、明かりにきよろつく化けの皮〜」
とは、なんてかっこいい!
婚礼が決まりはしゃぎながら支度する娘の場面は
「覚束膾拵へも、祝ふ大根の友白髪、末菜刀と気も勇み、手元も軽う ちよきちよきちよき」
とはしゃぐ気持ちが伝わります。抜粋しているときりがないので、この辺で。歌舞伎もこうやってセリフ本(床本集)が劇場で買えると良いのに。

幕間では、友人のご招待で舞台裏も見せていただけました。いつもうっとりと文楽の世界に入ってしまうのですが、(がさつな私などよりもずっとずっと)繊細な動きはたったこれだけの関節から生まれるのかと思うと驚きます。今回の一幕目には、なんと本物の大根をスコーンスコーンと切る場面が出てくるのです。料理上手な人形を操るのは、やはり、吉田簑助さん。









義太夫は舞台の前に塩をまいて、清めてから上がります。

まだ命が吹き込まれる前の人形はまるで小さな人のようで、ドキッとしました。